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【英国・教育移住のリアル①】ドタバタ現地採用、予想外の連続(出発編)

紅茶や英国王室、二階建てバス「ダブルデッカー」、ビックベン――数え上げればきりがない観光資産の数々。イギリス、特にロンドンは世界中の人々を虜にし、観光地としても不動の人気を誇ります。そんな中、子育て世代が注目するのは、やはり教育。オックスブリッジ(オックスフォード大学とケンブリッジ大学を合わせた総称)やイートン校など名門私立校は、世界最高峰の教育を提供し、階級社会であるイギリスの特権階級への入り口です。「わが子に世界トップの教育を!」。そう願うのは親として自然な気持ちですが、なかなか実現は難しいもの。私たち家族もそう思ってきました。そんなある日、ロンドン現地採用の切符が――。家族5人、スーツケース5つで現地にたどり着いた私たちを待っていたのは、リアルな「理想」と「現実」のギャップ。そんなイギリス教育移住のドタバタ劇を連載形式でお届けします。(在欧ジャーナリストHugh)

◆5人家族、安定を捨てる

まずは、簡単な自己紹介を。私の職業はジャーナリストで、日本では通信社などで20年間報道記者をしてきました。社内政治にもまれながら、やっと海外特派員のキップを手にしたタイミングで、ある日、ロンドンのリクルートメント会社から突然メールが届きます。

「ロンドンのメディア企業が編集長を探しています」

聞くと、会社は中小規模な一方、経営陣が高齢なため、代替わりが期待できるとのこと。定年もないことから、永住権への道が開かれていました。年収はかなり渋く大家族を養うにはぎりぎりながらも、妻と試算したところ、何とか持ちこたえられる金額と判断しました(この試算が甘かったことはあとで気が付きます)。子供たちの教育を第一に考えていた私たち夫婦にとって、大企業の地位を捨てても挑戦する価値があると考えました。

私たちは、夫婦と子ども3人の5人家族。子どもたちは6歳違いで、渡英した2022年当時は、長女(14歳)、長男(8歳)、次男(2歳)でした。それぞれ、中学生、小学生、就学前と全方位的に学校に携わらなければいけない構成です。そのため、日本では夫婦二人三脚で学校行事や習い事に送迎する毎日を送っていました。

英国で働けば「もっと子ども重視で働くことができるだろう」。そう思って判断した決断でしたが、これも大きく予想外だったことがのちに判明します。何につけても「爪の甘い夫」を持った妻の苦しみは想像に難くないでしょう。

◆オファーを得たものの、揺れる気持ち

私が現職からオファーを得たのが、2022年5月でした。そこからビザの手続きなどを行い、実際渡英したのは9月末。この数か月はほぼ記憶がないほどの忙しさでした。当時の上司に退職を告げると「今駐在の手続き始めているのに、いいのか。これからやりたいことができるぞ」と留意され、相当心が揺れました。期待もうれしかったし、この会社の海外ビジネスを強化したいという気持ちが強かったこともあり、逡巡しました。

しかし、海外の日本語メディアの「勝ち方」をある程度知ることができれば、自分が実現したい「海外で稼ぐメディア」を作ることにつながると判断し、離職を決めました。そこからは、妻と手分けして事務的な手続きを裁くことに専念しましたが、何より時間を割いたのが家探しでした。

英国では住所がないと学校が決められません。私たち夫婦は20数年前に二人ともロンドンの大学に通っていたこともあり、ある程度の地の利はありましたが、学校となると話は別です。

イギリスには、教育水準監査局「Ofsted(オフステッド)」が実施する監査で、学校の評価が公表される仕組みがあります。ネットでも公開されているため、どの地域のどの学校の評価が高いのか、一目瞭然で分かります。私たちは、まずは中学生の長女の受け入れ先を優先的に考え、ロンドン市内で高評価を得ている学校を探しました。

しかし、ここまで情報がオープンであれば、みな考えることは同じ。人気校に問い合わせると、鼻であしらわれ、当然空きはなし。それ以上に、補欠待ちが100人を超える学校もありました。当初は治安もよく優良校が集まるロンドン北部を集中的に探しましたが、なしのつぶて。住宅の供給不足も相まって、家探しに苦労する中、学校選びも早々に暗礁に乗り上げました。

ロンドンに到着し、ひと安心する家族                      

◆家も学校も決まらないまま出発

刻々と近づく渡英の日。結局は家も学校も決まらないまま、出発します。航路は、エミレーツ航空でドバイ経由でした。ここでもハプニングの連続で、トランジットのドバイの空港では、トイレに行った長男の顔に清掃員のモップが当たり怪我を負う事件が発生。目の上に大きなあざができた長男を連れ、空港職員に対応を促すと、搭乗するか、空港に残って警察の取り調べを進めるかと迫られます。

苦渋の決断で飛行機に乗り、機内では長男の額をアイシングし続けました。15時間を超えるフライトを乗り越え、ヒースロー空港に到着した私たちは疲労困憊。空港近くのホテルに倒れこむように吸い込まれました。翌日気を取り直して朝食を取った私たち家族。疲れの中にもロンドンに到着できた達成感と自信が笑顔に混じり、まだまだ希望に満ち溢れていました。この後、想像を絶する流浪の旅が待っているとも知らずに…。(続く)

 


							
						

Comments (2)

  • そらsays:

    2024年3月31日 at 11:25 AM

    おや?
    なんだか面白そうなサイトですねー。
    今後どんどんページが充実していくのでしょうね。
    楽しみです!

    • Comet編集部says:

      2024年4月9日 at 11:50 AM

      そらさん、早速見ていただきありがとうございます^^
      これからどんどん更新していく予定です。ぜひご期待ください!

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